ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
それは矢口さんの目から見ても明らかなのだろう。
あの人…桐谷、とかいう男の原さんへの好意。それはきっと友達の妹、として見ているのではなく一人の女として見ているもの。
すごく分かりやすい人だと思う。よく原さんに触れているし、この前だって原さんのミスを口実に食事に誘ってみせたりして。
そういうのに気付けないところが、彼女の唯一腹立つところ。
「…わざわざありがとうございました、助かります」
「いいよ、気にしないで」
途切れ途切れ聞こえる会話を聞きながら見れば、受け取った書類を抱え頭を下げる彼女。そんな彼女の頭をポンポンと撫でるその手に、また笑顔を見せる。
あぁ、ほらまた。こうして俺を苛立たせる。
勝手な、俺一人の感情だってわかってる。だけど、誰にでも簡単に近付く彼女が、誰にでも笑顔を見せる、それがひどく心をざわつかせるんだ。その理由だって、分かり切っている。
「じゃあ俺は速水探しに資料室行ってみるわ」
「そうっすね。…早く行かないとあの二人始めかねないっすよ」
「それは遭遇したくねーな…」
矢口さんは笑うと、俺が来た方向である資料室の方向へと向かって行った。