ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
「あ!!」
「わ!大変大変!とりあえずまず書類どかしてっ…」
倒れたカップからみるみるうちにテーブルへと広がっていくコーヒーに、桐谷さんと私は急いで手元の書類たちを隣の空いているテーブルへ移す。
「す、すみません…」
「…台拭き取ってくる」
「うん、ありがとう」
一方で青井くんは、台拭きを取りにそそくさとその場を離れた。
「美紅ちゃん、ヤケドとかしてない?」
「はい、大丈夫ですけど…」
そうわたわたと見れば、自分も書類関係も全て無事な一方で、桐谷さんの黒いスーツのジャケットの右袖はコーヒーで濡れてしまっている。
「ひっ、ひー!!桐谷さんすみません!スーツにシミが!!」
「へ?あー…本当だ。ついちゃったんだね」
「ごめんなさい!クリーニング代…いや、弁償します!!」
「あはは、大げさだなぁ。どうせ黒だし目立たないよ。少しシミ抜きすれば大丈夫」
「申し訳なさで私が大丈夫じゃないです…!せめてクリーニング代だけでも…」
桐谷さんは笑ってくれるものの、生地もシルエットもしっかりとした彼のスーツが安いものではないことくらい、そういうものに疎い私でもわかる。
それでも尚、彼は笑顔を浮かべたまま、濡れていない左側の手で私の頭をよしよしと撫でて宥めた。