好きな人のお母様に恋心がバレました


というかそもそも私服姿自体が初めてだ。
先輩はボーダーの半袖に黒いジーンズをはいて、黒ぶちの眼鏡姿だった。
パッと見ると大学生のようで、ラフな格好が逆にドキドキしてしまう。



「会社ではコンタクトだからね。
本当は毎日眼鏡でいいんだけどね、ラクだし」



眼鏡を軽く中指で押し上げて、先輩は言う。



そんな姿も麗しい。
誰がなんと言おうと格好いい。



ニヤつきそうになる頬を必死に抑えて、お似合いです、と勇気を振り絞って言ってみる。



「宮戸さんも」



「え?」



「会社じゃ見れないような格好してる。
なんか、いつもの宮戸さんぽくなくてさ。最初違う人かと思ったよ」



そう言われて、はた、と自分を見下ろす。
確かに花柄のワンピースに淡い色のカーディガンなんて横浜にデートでも行くんですかという格好だ。



「あはは、いつもこんな格好してるわけじゃないですよー」



「え、そうなの?
今日は何か特別な日?」



「………はっ」



しまった。お口がつるりんこだ。
いつもこんな格好してるんですって言わなきゃダメなとこだった、ここは。
こんな調子じゃ、いつもの彼氏できないダメ後輩・宮戸依になってしまう。ここで普段は可愛いというギャップを見せる作戦だったのに!!!



「……今日は気分でオシャレしてみました……。
今日が特別な日でもないし、なんなら映画一人で見にくるくらい暇人です…」



諦めて取り繕って、がっくりうなだれる。
すると先輩は何かを思い出したようにポケットに手を入れる。


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