好きな人のお母様に恋心がバレました



「男の人と二人で映画を観るの、初めてです」



映画館の中でも一番後ろのど真ん中という良い席に陣取った。
そしてその映画が始まるまでの時間、思っていたことがついぽろりとこぼれた。



こぼれてしまったものは仕方がない。
でも、言ってしまってから照れ臭くて、



「え、えへへ……」



顔がどんどん熱くなる。
誤魔化したはずのえへへが、他人の声のように耳に遠く届いた。



すると先輩は私から少しだけ視線を外す。
心なしか、先輩の顔も少しだけ赤みを帯びている気が、するような。
でも、これはきっと私の願望だ。



「俺も、25歳にして初めてだけど」



「私も、23歳にして初めてですっ」



そう言うと彼は視線を私に戻して、少しだけはにかむ。
それが嬉しくて、こそばゆくて。
私はとても幸せだった。



映画が始まってからも少しの間、
横を見ると先輩がいるだなんてことが奇跡みたいで
何度も確かめるように横目で先輩の存在を確認してしまう。



確認するたびに安心して、そして一つのことに気付く。



(あれ?今日、香水のにおい、しないな……)



ふと、そんなことを思ったのもつかの間で。
そのうち私は映画に見入っていったのだった。


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