好きな人のお母様に恋心がバレました


テーブルとテーブルの間をくぐり抜ける間に、いろんな人からお声がかかる。ありがたいが、今はそれどころではない。
目指す先には、酔ったことをいいことに朝霞先輩にペタペタと触りまくる女豹の姿がある。



断言しよう。
こいつは絶対に 酔 っ て い な い。



なんか酔っちゃったみたーい、という女の八割方酔っていないこの世の中、そんな簡単に先輩に触れるなら私だって触りたい。
こうなったら私も酔ったふりして二人の間に潜り込もうとしたその瞬間、パチリと女豹と目が合った。



無言で見つめ合う一瞬の間。
朝霞先輩に触れかけていた女豹の手はサラリと降ろされて、ふぃーっと長いため息。
どうしたんだろう、と見つめていると、スッと女豹は立ち上がった。



「いいわよ、私の席。座ったら」



「え……」



「そろそろ部長にでも媚び売ってこようと思ってたとこだし、いいわよ。……存分にアピールなさい。可愛くしてきたんでしょう」



最後の方は、耳元でコソッと呟かれた。
チラリと視線を降ろすと、既に出来上がっている朝霞先輩。
こちらにはまだ気付いていないようだ。



「い、いいんですか。女豹だってーー」



「だって、当て馬役なんて真っ平ごめんだもの、気分悪い。それに、そろそろ次のターゲットも見つけたいしね。
……いい女ってのは同時に何人にもツバつけとくもんなの」



同時に何人も、というところに引っかかる。
やっぱり、この人には先輩を渡したくない。
だってーー



「………あなたはきっと何人もお相手がいるんでしょうけど、私には朝霞先輩しかいません。
手を引いてくれようがくれまいがーー先輩は絶対に渡しません」


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