青春を取り戻せ!

対決

10月29日。僕は白木に権利金のリミットが迫ってますが、用意は出来てますか、と電話で尋ねた。

「あぁ4億と金星(ビーナス)の落とし子でしたね。あまり大金なので持ち歩きたくないんだが、先生はうちにはまだ来たことがなかったですよね」

「ええ」

「一度女房の手料理を食べにいらしてください。お土産はアタッシュケース2個分用意しておきますから」


翌日、僕は白木の住居に出向いた。

彼の家は会社から20分程の距離にあり、新興住宅地らしく区画整理はできているが、家のまばらな郊外にあった。

ひときわ大きな敷地面積を誇っている大理石の石垣で囲まれた家が白木邸だった。

中に入ると、芝生の広がる庭があった。右側には白い砂場が二つあり、ほぼ中央にゴルフのピンが立ててあった。綺麗にメンテナンスされている右半分はグリーンに使用されているのだろう。

屋敷の横に大きな犬小屋がヘッドライトに浮かんだ。
迷惑そうに目を細め、犬小屋から出て来たのは、白く大きな少し歳をくった紀州犬だった。

肌寒くなった大気の中に姿をさらすと、白木夫婦が出迎えに出てきた。

二人に挨拶を交わしていると、犬がシッポを振って寄って来た。
そして、僕の靴の匂いを嗅ぐ仕草をした後、ズボンに前足を掛け、所構わず舐めた。

未美が犬から距離を取ったまま、大きな声を上げた。

「ボン!悪戯しちゃ駄目でしょ!」
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