青春を取り戻せ!
(やっぱり、ボンだったのか!!)

喜びのあまり一瞬眩暈を覚え、その場に座り込んだ。

ボンはチャンスとばかりに僕の顔を舐めた。

「ホラッ、先生はお困りだ!」

白木はボンの鎖を乱暴に引っ張った。

「キャン!」ボンの首はねじれたようになり、悲鳴を上げた。

「乱暴しないでください。私は犬が好きだから、犬も大体私を好いてくれる。これはありがたいことだと思ってます」

「先生、外は寒いですから、そんな犬は放っておいて、中に入りましょ」

「はい」とは答えたが、腰を下ろしたままボンの頭を撫ぜつづけた。

ボンは僕を覚えていてくれたのだ。心の中で、ボン!会いたかった!と叫んだ。思わず、目頭が熱くなるのは禁じ得なかった。

舌の無差別攻撃に、付け髭が片方取れてしまった。
急いでそれを付け、歩き始めていた二人を見た。

未美だけはこちらを見ていたが、死角になっているので大丈夫だろう。

心行くまで抱き締めたいという衝動にかられたが、あまり親しそうにすることは不自然だと重々承知していたので、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。


豪華な食事の後、応接間に通された。

家政婦が冷やしたワインをグラスに差し終えた。
それを待ちかねたように白木は、

「おまえたちは私が呼ぶまで決して入ってくるな。それから電話はすぐだぞ!」
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