青春を取り戻せ!
彼女は、もう中学3年になっていたのだ。

料理を食べている僕の顔を、彼女は大きな瞳で一心に見つめてきた。

僕は一瞬でも女を感じてしまった後なので、無遠慮な視線にドギマギと心臓を高鳴らせていた。

突然、彼女の口が開いた。

「ねぇ? 顔のいろつやが悪いわよ。…どこか体の調子でも悪いんじゃない?」

「べつに、どこも」

「嘘!私は騙されないわよ」

微塵(みじん)も曇りのない瞳に突き刺された。

天使のような瞳はごまかせないと観念し、研究のことと悪夢のことを話した。

彼女はしばらく黙っていたが、

「私も神さまと閻魔大王に賛成だわ。いつまでも生きてたっていい事ばかりじゃないと思うし、寿命があるから人生が輝くんじゃない。そんな薬、発表すべきじゃないわ」

僕は立ち上がると、奥歯を噛み締め、拳を振り上げていた。

「わかったようなことを言うな!
優紀はまだ尻の青い子供だから、若くいたいという願望や、僕のこれまでの努力がわからないんだ!!」

彼女の僕を見つめる目が更に大きくなった。

次の瞬間、透明な液が湧き上がった。

目縁が一杯になると、輝きながらほおを流れた。

「ワァーッ!」

彼女は両手で目を覆うと、脱兎(だっと)の如く僕の脇を擦り抜けて出て行った。
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