青春を取り戻せ!
僕は仕方無く、全てを話していた。

彼は目を輝かせ、

「素晴らしい! 君は我が社のメシア(救世主)だ!」

と叫び、僕の両手を取った。

「すぐ製品化できるかね?」

「いや、当分無理です。これは僕のライフ・ワークとして取り組んでいきたい薬ですし、まだ目星が立った段階ですから」

「でも普通、この種のマウスの寿命は1年半から2年ぐらいだろ。この檻を見ると全て1年プラス259日と書いてあるじゃないか、プラセボのA群が正常な老化とすると、二つの薬を投与してるD群は異常に若い。
つまり動物実験は成功なんじゃないのかね?」

彼は僕の顔を鋭い目付きで覗き込んだ。

「ええ。今のとこ順調ですが、……実はこの薬を世に出そうか?埋もれさそうか?計りかねてるんです」

「なにバカなこと言ってんだ!
これ程のビック商品は今後考えられない。
君には今20万くらいの給料しかやってないが、これが商品化されれば、今の5、6倍はすぐに払えるようになるよ」

「……」

「お願いだから、くだらないことを考えるのはやめてくれ!」

「……」

「…じゃ、今後も我々の生体科学製薬のためにしっかり頼むよ!」

彼は、僕の思い詰めた顔を見て、今は何を言っても無駄だと判断したのか、肩を痛いほど叩くと出て行った。
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