青春を取り戻せ!
……しかし人類の飛躍もストップするだろう。

常に遺伝子は新しい事象をイン・プットして進化しているのだ。
石器時代の人間がいくら長生きしても、現代の文明は造れなかっただろう。

結局、人類の為、地球の為に大いなる意思が働き、老化を促進しているように思えて仕方ない。

この大自然の摂理をイン・プットした者が、太古の昔から神と呼ばれている者かもしれない。

……だとすると、僕は知ってはいけないことを、知ってしまったのかも………。

…待てよ!? 

運が良かったとはいえ、僕が見つけられたメカニズムだ。先人がすでに何人も解明していて、発表を控えていた可能性がある。

…何て僕は馬鹿なんだ!?
13も年下の優紀でもわかったことなのに、…彼女には明日必ず謝ろう。

目を閉じたが眠れなかった。
白木に秘密を教えてしまったことが気になったのだ。

研究室に向かった。

コンピューターに入れておいた例の薬の構造式や抽出法などをマイクロ・フィルムに写し代えると、全てのデータを削除した。

残っていた薬もナガシに水と一緒に流した。

帰りの車の中で、マイクロ・フィルムの処分に頭を悩ませた。

本当なら捨てなくてはならないのだろう?
しかし、僕にはどうしても出来なかった。

自分の青春が、自分の存在自体が、この小さなフィルムに詰め込まれているような気がしてならなかったのだ。

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