青春を取り戻せ!
家に着く頃には夜がしらじらと明けて来ていた。

ドアを開けると、ボンが自分の小屋から起き出して来た。

「ごめんね。起こして」

「クーン」

ボンはあくびと一緒に伸びをした。

僕の目に、白木から貰った臨時ボーナスで買った、りっぱな本革製の首輪が飛び込んできた。

…これだ!?

ボンからそれを借りると、縫い付けてある糸を取り、皮を裂くと、中にマイクロフィルムを刺し込み、元通り縫い目に合わせて縫合した。

それをボンの首に返すと、時間はもう出勤タイムになっていた。

今日は休もうかとも思ったが、頭が冴えているのですぐには寝る気になれなかった。
それに実験はやめても、食事はやめられないラットたちが待っているかと思うと、車にまたがった。

餌をあげ終わると、所長室に行った。
珍しく今日はコンピューターの画面には株式のチャートではなく、プロヒット&ロスが映っていた。

「すみませんが、今日はこれで帰らせてください」

「何でだ?」

「…寝不足で頭が痛いのです」

「馬鹿者!日曜日遊び過ぎて、寝不足だから帰らせてくださいなどと言う世の中をなめた奴は、このまま帰って会社をやめろ!」

「……」(ざーけろ!?あんたと違って日曜も出勤してんだよ)
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