青春を取り戻せ!
「帰って会社をやめるか?このまま仕事に入るか?早く決めろ!」
「…わかりました」
「どう、わかったんだ?」
「仕事につきます」
相手がそう来るなら、今日はやる気も、やることもないので、どこかで寝ていようと思った。
同僚に文献検索に行って来ると言い残して、自分の車の中で寝た。
起きたら、午後一時だった。
頭痛は治まっていた。
(アッ) 未美との日課のお昼を思い出した。
急いで小川の前の指定席に行くと、もう彼女はいなかった。
事務室に電話をして謝った。
『いいのよ』と彼女は言った。
いつもの知的な声だけでは、本当にいいのか?怒っているのか?判断がつかなかった。
でも考えてみると、彼女が怒ったことは、もう3年の付き合いになるが、一度もなかったように思える。
釈然としない寂しさを感じた。
僕は研究室に戻ったが、仕事に入る気はしなかった。
漫然と科学雑誌に目を落としていた。
肩を叩かれた。
「相変わらず、勉強熱心だね」
白木社長が紙コップを持ち、横に立っていた。
僕は雑誌を閉じようとした。