青春を取り戻せ!
白木には以前から暖めていた、NK(ナチュラル・キラー)細胞の活性を高める研究をして、副作用のない抗癌剤を作り、儲けさせてやればいいと考えていた。(※NK細胞はガン細胞を特異的に識別し、殺すことがわかっている)

大学時代からトータルして5年間、心血注いだ一枚一枚が何秒もかからず真紅から真黒に、そして灰色に変わっていく様を、老化のメカニズムを目のあたりに見るような気持ちで眺めていた。

その時、電話のベルによって感傷から目覚めさせられた。

「はい。生体科学製薬の研究室です」

「よかった。まだいてくれて」

声の主は未美だった。

「どうしたの?」

「お昼、ご一緒できなかったでしょ。だから、あなたの家でお食事作って、待ってていいかしら?」

「うん。サンキュー。…鍵のある所知ってる?」

「ええ。知ってるわ。なるべく早く帰って来てね」

単純な僕の心はバラ色に変わっていた。

さっきは怒ったことがないのを物足りなく感じていたが、彼女は優しく、大人なのだ。
これほど魅力的な女を不満に思うなんて、おまえはバカな奴だ!と思った。

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