青春を取り戻せ!

悪夢

素晴らしい夕食が終わった。

フレンチ風のシタヒラメのムニエルだった。

そして彼女も素晴らしかった。
黒のドレスが成熟した女性の魅力を十分にかもしだしていた。
それにもう一つ、素晴らしく今日は素直だった。

僕たちの前には鮮血のような真赤なワインが揺れていた。

「そろそろ結婚の日取り決めない？」

「そうね。いいわよ」

「本当だね！じゃ今度の休みに式場回りしてみない」

「いいわよ」

「大体、いつ頃がいい？」

「そうね？早ければ早いほどいいわ」

僕は嬉しかった。

彼女はいつも、こういう具体的な話になると兄を持ち出し、はぐらかしてきた。
しかし今日は違った。早ければ早いほどいいわ、ときた。

久し振りに心の底からハッピーになり、ワインもすすんだ。

「子供は早い時期に二人欲しいわ」

彼女の声が追い討ちを掛けるように、僕を幸福とワインに酔わせた。

――――　僕は祝福の花びらの中を、純白のウェディングドレスの彼女を抱き上げ、微笑みを浮べながら歩いていた。
そのまま教会のドアを開けると、強い陽射しが差込み、目を閉じずにはいられなかった。――――

「あなた！こんな所で寝たら風邪ひくわよ」