青春を取り戻せ!
僕は半強制的に弁護士をつけられていた。

弁護士にも何も協力的なことは言わなかった。

ただ、婚約者の未美にアリバイを聞いてくれとだけ言った。

それともう一つ、それに関係した質問をした。

「以前、血縁関係者や妻の証言は証拠としての効力が無いと聞いたことがありますが、婚約者はどうなんですか?」

人の良さそうな年寄りにしか見えない弁護士は、

「正式に婚約をし、結婚に準じた生活を営んでいるのかね?」

「結納はしてません。
エンゲージ・リングだけは渡してありますが、…でも、婚約に正式というのがあるんですか?役所に婚約届けを出せ、というのも聞いたことないし?…」

「いや、私の聞きたいのは、同居してるのかということだよ」

「いいえ。してません」

「現住所も別々だね?」

「はい」 

「じゃ心配ない。ちゃんと証言は効力を発揮しますよ。法的にはまったくの他人ですからね」

弁護士は人の良さそうな笑みを見せた。

「問題は、未美さんが証人台を引き受けてくれるかです」

「それこそ心配ないです。僕らは愛を誓い合った仲ですから」

と、僕も笑った。
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