青春を取り戻せ!
「君は自由になりたいのか、なりたくないのか、どっちなんだね?」

「もちろんなりたいですよ。しかし勝算もなく、また針のむしろのような被告人席に立つのはもっと嫌です」

「本当に未美さんは被害者の殺された時間に、君の部屋にいたのかね?」

僕は彼を睨(にら)んだ。

「なに言ってるんですか!勿論です」

「すまん。すまん。依頼人を信用出来ないようでは弁護士失格ですな」

と、彼は僕から目をそらせた。

僕は荒波のように変化を見せる自分の心に堤防を造るべく、奥歯を強く噛み締めた。

「…いいえ。こんな非協力的な依頼人では無理もないです」

彼はそれには答えず、僕の目を覗き込んできた。

「君は右利きだったよね?」

「はい。…そうですが」

頷いてはいたが、彼が何を言いたいのかはわからなかった。

「君が犯人だと思えない理由はもう一つある。それは、台所のゴミ箱から発見された凶器の刺身庖丁についていた君の指紋が、左手のものだったということだ」

…どういうことだ?

これも初耳だった。

「…警察はそれについて何と言ってるんですか?」

「彼らの見解だと、初めはもめてたようだが、結局、庖丁が左手に近い所にあったので左手で掴んだ。
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