青春を取り戻せ!
そして、右手を左手首に添え、柄を体で固定し、被害者に体当たりをしたということになったようだね」

「では、僕の体はかなりの返り血を浴びてることになりますが?」

「知らなかったのかね?…同じゴミ箱から、ガイシャの返り血を大量に浴びた君のシャツが発見されたよ。
しかもご丁寧に血の色の映える白い綿シャツがね」

彼は一回溜め息をついた。

「君の握力値を拝見させてもらったが、極端に右のほうが強い。だから一旦左手で凶器を掴んでも、右手に持ち返るのが普通だと、私は思えるのだがね?……」

彼の身振りをまじえて熱心に話す話を、僕はまるで遠い国で起こった他人の話のように聞いていた。

「君はこの件に関しては何も思い出さないのかね?」

「だから、思い出さないのではなくて、何もやってないんですよ!」

僕の感知しないところで、物的証拠が出来上がり、僕の関知できないところで、僕の運命が決められていく……。

自分を含めた全てに腹が立ち、____拳を壁に打ちつけた。

「…どうも、君にはもっと心を割って話せる、若い弁護士のほうがむいてるようだな」

彼は声を落として言った。

「…あなたには未美を偽証罪にできる確固たる自信がないようですね?」

「今のところはね。それに問題がある。………」

と、彼は神妙な顔で言った。
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