優しいカレの切ない隠し事


二人が、ただの上司と部下じゃないことはよく分かった。

きっと、お互い好き合っていたはず。

もしかすると、恋人同士だったのかも。

もしそうだとしたら、隠されていたことにもショックだし、二人がこうやって抱き合っていることにもショックだ。

だけど、それ以上に、二人の力になりたいと思って、引き返してきた自分がバカらしくて泣けてきた。

「栞里さんも、圭介も最悪」

ようやくその場を離れ、放心状態でビルを出る。

涼太さんと何があったかは知らないけど、圭介に甘える栞里さんが許せない。

わたしに優しくしてくれた栞里さんが、ウソみたいに思えてくるじゃない。

一体どんな気持ちで、わたしと圭介の仲を応援してたの?

二人があの後、どんな会話をしたのか、何をしたかなんて分からないし、知りたくもない。

ただとにかく、二人が許せなかった。
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