右隣の彼
それから間もなくだった。
勢いよく店のドアが開たかと思ったら。
ぜーぜーと息を切らした岸田君が膝に手を当て背中で呼吸しながら
呼吸を整えていた。
「岸田君?・・・もしかして…走ってきた?」
岸田君はまだしゃべれないようで何度もうなずいた。

そんな走ってくるような事でもないのに・・とふと駿さんをみると
何だか楽しそうにくすくす笑っていた。
…これは何か岸田君に言ったな?
そう思ったら
「俺は大丈夫…一美とは…遊び…なんかじゃないから…だから」
「だから?」
何が何だかかわからずリピートしてしまった。
「安心して」
「はい?」
何を安心してなのか分からず何となく駿さんの方を見た。

「いや~~一美さんが、接待してた社長さんから結婚はまだかってしつこく聞かれたらしいのさ。
 うまくごまかしたけど、実際しげが自分のことをどう思っているのかなって
 思い悩んでいるうちにここに来たってシゲに知らせたんだけど?」

目が点になった。
さっき言ったよね
『颯太が言った事気にしないでね』ってあれ結婚の事を言ってたんだよね。
言っておきながら岸田君を呼ぶために結婚ネタ出す?
でも思っていることは大方間違ってないだけに下手にツッコミをいれると
駿さんの事だ何を言い出すかわからず私は何も言えなかった。
「で?誤解を解くためにしげがすっ飛んできたって事だよね」
「だって、兄貴が凄く深刻そうに言うからさ~一美の事が心配で」
だが当の私はきょとんとしてて・・・・
なにか状況に誤りがあるのではと岸田君は駿さんのにらんだが
駿さんは岸田君のにらみを屁とも思わない様子で
私に近づき「ほら・・・一緒に帰って聞きたいこと聞いてみな」
というと颯太さんの座っている方へと移動した。

まだ状況が把握できてない岸田君は
私の飲みかけのウーロン茶の入ったグラスを持つと一気に飲み
「とりあえず…帰ろっか・・・」と私のバッグを持ち反対の手で私の手を取り
駿さんに挨拶もせず店を出ようとした。
私はカウンター奥の駿さんとちょっと不機嫌そうな颯太さんに会釈をして店を出た。
























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