右隣の彼
岸田くんは目を大きく見開き言葉を発することなく手を頬に当てながら
私を見つめてた。
私の口は小刻みに震えていた
「一美?」
「人の話を・・・最後まで聞いてから言いなさいよ!なによ!年が近いからいいとか社長にしとけとか
 結婚しろとか・・・ふざけないでよ!あの人は私なんか好きでも何でもないんだから!
 あの人は葵さんが好きなのよ!」
「は?」
岸田くんは目を見開き口をぽかんと開け状況がまだ理解できていないようだった。
「・・・だーかーらー私の彼が岸田くんでその岸田くんのことが好きな葵さんの働いている
 会社の社長がさっきの颯太さんで、彼は葵さんのことがすきなの!」
「え?・・・マジで?」
私が大きく頷くと岸田くんの怒っていた顔が緩み、向きを変えると私を抱きしめた。
「岸田くん?」
「・・・ごめん。一美の話を最後まで聞かずに怒って・・・でもほっとしてるかも」
「・・・それはどうも」
私は全くすっきりしてない。
確かにここまで話が大きくなったのは私が悪いけど・・・

「でも葵のことが好きな社長が何で一美とプライベートで会おうとすんの?」
「・・・・・」
あ~~そうきたか・・・
そうだよね。普通は私じゃないものね・・・
でも言いにくいんだよね、だって…

「一美?」
耳元で囁かれると身体から力が抜けちゃってどうにでもなれって思っちゃうこと
わかっててわざとやってるってわかってるんだけど・・・・
「…・・・わかったよ。言えばいいんでしょ!私と・・・岸田くんが結婚したら
 葵さんはきっと岸田くんの事諦める。そしたら自分の事見てくれると思うから
 颯太さんが私に岸田くんと結婚しろって・・・言ったの。それを言うために私は呼ばれたの。」
どのくらいの沈黙が続いただろう。
だから言わんこっちゃない。
今のはまるで私が岸田くんに結婚してくれって言っているようなものよ。
だけどこの間が私の言葉を拒絶しているとしか思えない。
そりゃ~こんなおばさんを奥さんになんかしたくないよね。
私は微妙な年齢だけど岸田くんはまだ遊びたいに決まってる。
私とのこともちょっとしたアドベンチャーみたいにしか思ってないのよ。

あ~~言わなきゃよかった。
こんなの最初から結果はわかっていたはず。
なんちゃってね・・とかいってもう帰ろうか・・そう思ったのだが
「しようよ」
「・・・え?」
「だから俺たち結婚しようよ」








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