右隣の彼

怪しいのは店だけにして

目的地も告げずに歩く事約10分。
ついた場所は隠れ家の様なというととてもおしゃれな響きだけど
案内された店はおしゃれとは程遠い外観だった。
「な・・なに?ここ店なの?」
「店ですけど?」
どう見てもただの民家にしか見えない。
しかも昭和の香りがする。
「岸田君の自宅とか・・・」
言ってみた。もちろん笑って違うと返された。
「文句なら、店に入ってから聞きます。店の前で店の悪口はよくないですよ」
「悪口なんてー」
言ってないという言葉は岸田君に背中を押され言えなかった。

こんばんは~と言いながら店に入るあたり
ここは岸田君の行きつけらしい。
そして私は店に入るなり、店の前でこの店をけなそうとした事を
後悔した。
今までいろんなお店を見てきたが
ここまでギャップのある店は初めてだ。
店の前は古い昭和の香りをぷんぷんさせておいて
扉の奥はおしゃれなバーって・・・・
本物の隠れ家じゃないの!

岸田君を見ると得意げな顔で私を見ている。
悔しいけれど
「こういうのもギャップ萌えっていうのかな・・」
と言ってしまった。
岸田君は笑いながらイスに座るように
慣れた手つきで私を案内する。
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