右隣の彼
31年も生きてきて男性からこんな言葉を言われたのは
初めてだった。
そりゃあ何人かの男性とお付き合いしてきたけど
ここまでの言葉は正直なかった。
あったとしてもピーロートーク止まり。
そこに本音があったかどうかは定かではなかった。

だから素面でこんな告白をされて
うれしくないわけではない。むしろうれしい・・・うれしいけど
それでも頭の中はぐちゃぐちゃだった。
どう受け止めればいいのかも・・・
だって岸田君は後輩で・・・
意識したのは昨日のキスからで・・・
彼女がいると思いこんでたんだから

「俺・・何度かカマかけたんだけど・・先輩全然気がついてなかったし
 全然脈なさそうで・・・もう正直心が折れてました。
 二日酔いの原因は・・・キスの途中で突き飛ばされて
 完全に俺を拒否ったんだって思って」

岸田君は私の腕を離すと大きなため息をつきながら天井を仰いだ
こんな悲しい顔をされるなんて思ってもいなかった。
でも私だって昨日はもう頭ん中ぐちゃぐちゃで
今朝だって本気で会社休みたかったんだから。
全て岸田くんが原因。

「あのね・・・私が岸田君を突き飛ばしたのは、彼女がいるのを知っていながら
岸田君とのキスを受け入れてしまった事への罪悪感からなの。
だから本当は私だって会社休みたかったわよ」


岸田君の顔がパッと明るくなった。
「じゃあ・・少しは俺の事ー」
だけど・・・
「好きなのかと聞かれたら・・・・わからない」

それが私の正直な気持ちだった。



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