右隣の彼
用はある・・・これは確かに嘘かもしれないが
しげ兄に会いに来たって言ったら怒る?・・・これは嘘じゃない。
だがそんなことを呑気に見ている場合じゃない。
葵さんは恐らく夏さんがみた人と同一人物だろう。
たしかに2人が並ぶとお似合いだ。
悔しいくらいにお似合いだ。
私と岸田君は恐らく恋人同士というよりは姉弟だろう。

「本当に用事があるなら悪いけど今度にしてくれ。今日は無理だ」
「そんな・・・」
葵さんが私を値踏みするような目つきでみた。
「用事って・・・この人?」
葵さん完全に敵意むき出しだ。
「そうだよ。」
即答する岸田君を私はまともに見れなかった。彼女なんだからもっと堂々と
していればいいのにと思う反面、自分が岸田君よりも年上ということが
この場においてやたら気にしてしまうのだ。

葵さんも岸田君の言葉に顔を歪めていた。
「じゃあ~今度っていつ?明日?それとも明後日?」
「・・・・電話じゃだめなの?」
「だめ!」
きっとこのまま押し問答が続くような気がした。
だからなのか、思ってないことを口走ってしまった。
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