右隣の彼

微妙な女心と31歳の壁

「おばちゃんか・・・」
岸田君から初めて鍵を預かり岸田君よりも先に部屋に入って、本当だったら
すごくドキドキしちゃうのだけれど、若くてかわいくて私より岸田君との
バランスが取れている葵さんからの『おばさんじゃん』は相当な破壊力があった。
しかもそれは決して間違っていない事だけに
どうすることもできない自分に自己嫌悪だった。

しばらく料理をする気にもなれず、ダイニングテーブルにどかっと座った。
「歳だけは、どうにもならないもんな~」
自分が年上だってことは承知の上で付き合っているといっても
やっぱりどこかに引け目を感じてしまう。
そうなるとあんなにポジティブだった自分が急にネガティブになる。
恋愛ってこんな些細なことでも凄く悩んでしまうものだったということを
久しぶりに痛感した。
それから重い腰を上げて私は買ってきた食材をキッチンまで運び
夕飯の支度を開始した。

今日はパスタだけど岸田君が帰ってきてから茹でるので
とりあえず下ごしらえとサラダにガーリックトーストの準備をした。
今日は私特製のたらマヨパスタだ。
タラコの皮を取り除いてマヨネーズと隠し味に醤油を入れてクリーム状に
なるまでかき混ぜる。
フライパンにはみじん切りにしたガーリックとバターを入れ茹であがった
パスタを一度フライパンに入れバターとガーリックがまんべんなく混ざったら
マヨソースの入ったボールの中にパスタを入れて素早くかき混ぜる。
お皿に盛りつけしたら上に刻みのりをのせて出来上がりってめっちゃ簡単な
パスタで手料理で岸田君に向かってどや顔で差し出せるものでも・・・・なさそう
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