右隣の彼
「ねえ~。なんか聞きたいことあるんじゃない?」
ニヤリと笑う岸田君の顔で彼が私の気にしていることを知っててわざと聞いてきた
のだとわかった。
「べ・・別に何もないわよ」
なんか意地悪されているみたいで悔しくってつい逆のことを言ってしまったのだが
「え~?何もないって顔じゃないでしょ~その顔は、聞きたくても自分からは
聞けないって顔…夕飯の時からずっとだよ。」
確かに気にしてたけど自分が思ってた以上に凄い顔してたんだと思うと
恥ずかしくなる。
うつむく私に岸田君はさらに追い打ちをかける。
急に私との距離をつめると肩に腕を回してきた
「聞きたいことあるんでしょ?」
わかってても決して自分から話してくれない。意地悪な岸田君に私も意地になって口を尖らせ首を横に振る。

何も答えずにいると岸田君は肩にまわしていた腕を離した。
まさか怒った?そう思って岸田君の顔を見ると
怒ってるというよりはその逆で口角がさっきよりさらに上がって、そして
「ぎゃ~!ちょ・・ちょっと…やっ!・・ちょ・・ちょっと・・く・・くすぐったい」
岸田君が私の脇腹を指でツンツンしてきたのだ。
くすぐったくって腰が引けるが岸田君はこれでもかとツンツン
「素直に言わないからこうなるの。言わないといつまでもやめないよ」
「ちょ・・ちょっ・・ぎゃっ・・っぎゃはは・・・ちょっ・・やめてお願い」
「ちゃんと思ってること言うならやめるって・・・言ってんじゃん」
「わ・・わわ・・わかった言うよ言うから勘弁して!」
岸田君の動きが私の言葉とともにぴたりと止まった。
腰から手が離れると岸田君は座りなおして前かがみで自分の足に肘をのせ
頬杖付きながら顔だけ私の方を向いた。もちろん口角はさっきから変わらずの
きっちり上がって、さ~言ってごらん。僕が何でも聞いてあげるよって顔をしてる。
余裕のない私と余裕ありあり岸田君。
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