矢野さん
この痛みを俺は知ってる気がした。


 飲み屋で口喧嘩をしてたのに、なぜ矢野は律儀にお礼をするんだろう……。


 なんでたまに、ふとした時に優しく笑うんだろう……。


 何で……。


 何でそれが……、俺は嬉しいと思うんだろう。


 矢野が泣くと苦しい気持ちになって、笑うと嬉しい気持ちになって……。

 惹かれているのか……?俺は。


 まさか……矢野なんかに……冗談だろ?


 自分の思考が間違いであってほしくて思わず矢野をみた。

 そんな俺を矢野は不思議そうに見ている。
 

「どうかしましたか?」


 少し頭を傾げて矢野が聞いてきた。

 
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