絶対に好きじゃナイ!
梨子ーー
誰かがわたしの名前を呼んで、優しく頬に触れる。
少しゴツゴツした、男の人の指先。
この手を知ってる。
だってこれは、わたしの大好きなーー
「……な、椎名。起きろ」
「へ?」
肩を揺さぶられてふと目が覚めた。
「あ……、あっ! ご、ごめんなさい! わたしほんとに……!」
バカバカバカ!
本当に寝てどうすんのよ!
会社の社長が運転する車の助手席で爆睡なんてありえないでしょ!
「あ? 別にいいだろ、俺が寝てろって言ったんだ。社長命令だ」
「す、すみません……」
慌てて辺りを見回すと、どうやらわたしは本当に爆睡してたらしいことがわかった。
どこかの地下らしい少し暗い駐車場に、わたしたちの乗る車が既に綺麗に止められたあとだった。
「行くぞ」
短く言った社長がドアを開けて車の外へ出る。