絶対に好きじゃナイ!

「いえ、お気遣いなく。彼女はもともと寒がりなので」


あたふたと慌てる医院長に向かって、社長がきっぱりと告げる。

柔らかく笑った表情は、完璧にお客様に対する礼儀をわきまえたそれだった。


「ですが、できれば膝掛けか何かを貸していただけたら有難いですね。彼女の脚が、すっかり隠れるほどのものを」



それから医院長が慌ただしく看護師さんを呼んだり、社長の手でわたしの脚に大きな膝掛けがかけられたり、社長が笑顔で淡々と設計に関する話を進めたり。

だけどわたしはその全部をどこか遠い出来事みたいに感じていた。

自分がなにをしゃべったかよく覚えていなくて、心臓の音ばかりが大きく聞こえる。




変だ、すごく変。

だって今のは、社長が自分の会社の社員であるわたしをさり気なく気遣ってくれただけ。


甘い囁きを聞いたわけでも、ましてとろけるようなキスを受けたわけでもない。


それなのに、今まで経験したことがないほどきつく胸を締め付けられる。

きゅうって、音がするんじゃないかと思うくらい。
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