絶対に好きじゃナイ!

今のはわたしの記憶にいる虎鉄じゃない。
お仕事をしてる、大人になった虎鉄。


それなのに、今の虎鉄を。
たった今隣にいる社長まで、わたしの心の中に閉じ込めてしまいたくなる。


記憶のなかの虎鉄も、手を伸ばせば触れる距離にいる社長も。
全部、全部、わたしのものって言いたくなるの。


名前を知らないこの気持ちが、どんどん膨れ上がってわたしを支配しようとしている。


ああ、どうしよう。

これってかなりマズイと思う。
近頃の甘すぎる攻撃で疲労困憊だったから、今のはちょっと致命的かもーー





「椎名、電車間に合いそうか?」


事務所の最寄駅まで戻ったとき、時計を見ながら社長がそう言った。


安達医院での打ち合わせはそんなこんなで無事に終わったんだけど、予定よりだいぶ長引いた。

昨日突然入ったsoirの社長との資料受け渡しまでは、時間がちょっとぎりぎりになってしまったんだけど……


「たぶん大丈夫です! 予定してた電車には間に合わないけど、もう一本遅い特急でも約束の時間には間に合うと思います」


ここからsoir本社まではだいぶ距離がある。
下手にタクシーを呼んだりするより、おとなしく次の特急を待ったほうが良さそう。
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