絶対に好きじゃナイ!
「本気で生殺しだけど、梨子のこと大事にしないわけにはいかねえから」
そう言ってわたしの鼻先にちゅっと小さな音と一緒にキスをおとした。
そして素早く立ち上がって、少し乱れたシャツを適当に直すと財布を掴んで玄関に向かう。
「え?あの……、え?」
あたふたと身体を起こしたわたしを、社長が玄関から振り返って言った。
「すぐに帰って来るから、お前は来なくていいぞ。そこで待ってろ。……逃げるなよ?」
ニヤリと笑ってそう言い残すと、わたしを置いて部屋を出て行ってしまった。
な、ナイって、なにが?
買ってくるって、なにを?
常備してる女だったって、なんのこと?
さっきの熱が嘘みたいにしーんと静まった部屋で、たぶん5秒くらいは考えた。
そして辿り着いた答えに、わたしの顔はかあっと熱くなる。
もう! 社長ってば……!
"常備してる女"ってなに!?とちょっと腹が立ったけど、あの雰囲気を断ち切ってわたしのために買いに行ってくれたんだと思うとなんだか怒れない。
わたしもはじめてで、目の前のことに精一杯で、そんなこと全然思いつかなかったし。
なんだか急に恥ずかしくなって、わたしはソファの上で膝を抱えて、なるべく小さくなって座った。