絶対に好きじゃナイ!
玄関のドアに手をかけたとき、頭の中で社長の声がこだました。
逃げるなよーー
そう言ってニヤリと笑ったあの人が、このドアから出て行ったんだ。
一瞬部屋で待ってみようかと思った。
帰って来た社長に、きちんと話してみればいいじゃんって。
だけどわたしの手はやっぱりドアを押し開けて、駆け出した足は止まらなかった。
今は、まだムリだ。
この気持ちを、社長が受け止めてくれるかもわからない。
そうだとわかったら、わたしの口は"それでもいい"って言っちゃいそう。
あの部屋で社長の側にいたいと思う気持ちと、一刻も早く離れたいと思う気持ちと。
ばらばらになりそうな心を必死に繋ぎとめて、わたしは夜の街に飛び込んだ。
どきどきと鳴る心臓の音。
薄いTシャツに夜の空気が冷たい。
冬の迫った刺すような空気が肺を突き刺し、ほてった肌もだんだん冷たくなっていった。
わたしはさっき社長に手を引かれて歩いた道を、ひとりきりで逃げるように走って行った。