絶対に好きじゃナイ!

「それじゃあ、どうして逃げて来ちゃったの? 虎鉄のこと、怖くなった?」


その言葉にわたしはぶんぶんと首を振った。

社長のことが怖いなんて、そんなことあるわけない。
怒ると怖いし目つきも鋭くて口調も荒いけど、すごく優しい人だって知ってるから。


「何があったのか、聞かせてくれる? じゃないと今すぐ虎鉄に電話してこの場所教えちゃうけど」


にこにことウソくさい笑顔を浮かべた要さんが、携帯をひらひらさせながら言った。


この人、この笑顔でこうやっていろんな人を言いなりにさせて来たんだろうなあ……

頭の隅でそんなことを考えながら、わたしはぽつぽつとこれまでのことを話し始めた。


あの後、何度かキスをしたこと。
手を繋いだり、社長の行動にいちいち胸がきゅんとなったりすること。

今日はじめて社長の部屋に行って、そういう雰囲気になったけど、逃げ出して来ちゃったこと。


「……不安なんです。社長とそういうことしちゃったら、わたしもただの女になっちゃう」


近所に住んでいた、妹みたいに思っていた女の子。
良くも悪くも、それはわたしだけの特別なポジションだったのに。
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