絶対に好きじゃナイ!


「あ、わたしの家、あれです。どうもありがとうございました」


わたしの住むアパートの前で足を止めてそう言うと、背の高い要さんがにっこりと笑って腰をかがめた。


「梨子ちゃん」


膝に手をついて、小さい子にするように視線を合わせる。


「虎鉄はさ、ああ見えて怖がりなんだ」

「怖がり……?」


あの社長が?

信じられないって顔をしたわたしを見て、要さんが笑って頷く。


「そうだよ。昔から、ケンカするときも悪さするときも、いちばんビビってたのは虎鉄だった」


本当に……?

わたしが見てた虎鉄は、いつも強くてかっこいい虎鉄だった。

仲間の先頭に立って、みんなに慕われて頼られて、そういう虎鉄だったのに。


「まあ、いざってときにいちばん強いのはあいつなんだけどね。自分が強いからって、俺らのこと心配するんだ。全員守れるか、全員無事に帰って来れるかってね」


ガキのくせに大袈裟で、すげえ生意気だろ?って、要さんがけらけら笑う。
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