オレ様探偵とキケンな調査
「男と女なんて、そんなモンだろ」


見透かしたように帯金さんが言い放った。


「それとも“愛してる”とか言ってほしかったのか?」


冷たい言葉。


唇に感じた熱が一気に奪われる。


「あたし…あたし!愛とかもう信じてませんからっ。フランダースの犬観ても泣けない女ですからっ」


「あ、そ」


ロッカーの小さな鏡に向かってネクタイを締める帯金さんの目は、いつもの鈍い光。


それを見て複雑な気持ちを持ちつつも、反面、ほっとしてる自分がいた。


大丈夫。


あたしは依頼主で帯金さんは探偵さん。


たった一度のキスがその関係を崩していないことに安心した。
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