オレ様探偵とキケンな調査
「亨…!」


「晃!亨が…亨が…!」


泣きながら医者とベッドの傍らにいる玲奈の肩を強く抱いた。


「亨?パパだよ?わかるか…?」


オレの問いに亨はゆっくりとまばたきをするだけで、呼吸器のマスクの中で言葉を発することはなかったが、長い長い眠りから目を覚ました、それだけで十分だった。


1歳半から時が止まったままの、亨。


何も話せないのも当然のことだ。


でも、日が経つにつれ、亨の目の光りは確かなものとなり、離乳食から始めた食事も次第に普通食へと変わっていく。


そんな一日一日の変化がオレと玲奈は何より嬉しかった───が。


医者の診断はオレ達の希望を砕く酷なものだった。


四肢不自由、記憶障害。


この先ずっと、亨の未来を縛る事故の後遺症。


それが玲奈を壊してしまった。


「わたしのせいで亨が…亨の将来が…!」


毎日毎日、涙で暮れる玲奈。


無力なオレはそんな玲奈の心の呪縛を解いてやることもできず、必死になって毎日亨にしがみついた。


「パパとママがわかるよな?春になったらまた歩けるよな?」


そんな根拠のない希望が、玲奈をさらに追い込んだ。
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