優しさ、そして愛
もう入るしかないよね
「汐見杏です…」
意を決して声をかける
「入りなさい」
強いけど優しさを感じる声が
私を呼んだ
「失礼します」
静かに襖を開けた
顔を上げると優しげに笑っている
兄の姿と着物を着た祖父であろう人
「杏!!」
私が入ってくるとお兄ちゃんは
一目散に私のもとに来て抱きしめてくれた
「1人で寂しかったよな?
会いに行けなくてごめんな
これからはずっとずっと
俺がそばにいるから」
昔と変わらない優しい兄
昔と違うのは私をすっぽりと包む
大きな身体とほのかに香るシトラスの香り
「ありがとう、お兄ちゃん…」
ぎこちなくそっと
背中に手を回した