*魔法の香り*

 き、キャンセル?

 来週にずらす!?





「――…はい、はい、じゃあ宜しくお願いします」



「……」





 あたしは

 呆然と先輩を見てしまった。





「ありがとう」





 流れるような口調で

 先輩は電話を切って携帯を

 あたしに戻してくれた。





「あのっ、人谷先輩? これは……」





 どう言うことなんでしょう?



 なにが何だか

 もうわからなくなってきて



 頭の中でシュミュレートしていた

 色々なモノが

 一気に真っ白になってしまった。





「あぁ、連れて行きたい所があるんだ」



「連れて行きたい所?」





 人谷先輩は

 そう言うと静かに笑って

 伝票を持って

 お会計へ行ってしまった。





「……」





 その笑顔が

 見とれるほど素敵で

 って……



 ハッ!!

 何やってるのあたし





「ひ、人谷先輩ダメです、あたしにオゴらせてください!!」





 あたしはなんとか追いついて

 お会計をさせてもらった。



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