愛が冷めないマグカップ



宮間さんは少し頬が赤くなり始めている。あゆみはお酒に酔っても顔に出ないほうで、だからこういうところでは変に飲まされ過ぎてしまうことも多かった。

この会社の宴会は、誰かが誰かに一気飲みをさせたり無理矢理飲ませたりということがないらしい。みんなそれぞれ、好きな相手と好き勝手に気持ち良く飲んでいる。




「あゆみちゃんが来てくれて嬉しいよ。あたし、事務所の女の子たちとはいまいち仲良くなれなかったから」




「宮間さん…わたしも、宮間さんがいてくれてよかったです!あの…ずっと、仲良くしてください!」




宮間さんが頷いて、あゆみは幸せな気持ちになった。自分が女で本当によかった。もし男だったら、マツさんとライバルになってしまうから。




「けっこう酔ってるでしょ、あゆみちゃん」



宮間さんがははっと笑った。あれ、おかしいな。顔には出ないはずなのに。




「あ、はい。けっこう、酔ってます」




「あたしもー」




宮間さんが、あゆみの耳元に顔を近づけた。なぜだかちょっとドキドキしてしまう。




「…小林部長、さっきからずっと見てるよ。あゆみちゃんのこと」




(…えっ?小林部長が…?)




「まさか。見てなんかないでしょう。小林部長、ずっと石橋さんと隣同士だし」



あゆみはしどろもどろになりながら言った。ちょっと投げやりな言い方になってしまった。これではまるでヤキモチを焼いているみたいだ。

宴会が始まってからずっと、エリカ様は小林部長の隣から離れない。小林部長もとくに嫌がってはいないみたいだし、誰もエリカ様に注意はしない。あゆみは、なぜかそれが腹立たしかった。







< 104 / 166 >

この作品をシェア

pagetop