愛が冷めないマグカップ
それ以降のあゆみはひどかった。
会席料理をお腹が破裂しそうなほど食べて、お酒を飲んで、飲んで、飲みまくった。
「宮間さぁーん、膝まくらしてくらさい…ムニャムニャ」
あゆみは宮間さんにもたれかかり、目を閉じてそのままずるずると畳に倒れ込んだ。
「ありゃありゃ、あゆみちゃんってばー」
宮間さんの呼ぶ声が遠くに聞こえる。迷惑をかけてごめんなさい。だけど今は、1ミリも動けません。
あゆみは思った。やってしまった、と。
そのときだった。
「…ったく。仕方ねぇ犬コロだな」
聞き覚えのある、ハスキーボイスが微かに聞こえた。
(あれ…この声は…)
体が、ふわっと宙に浮いたのを感じた。
あゆみの意識は、夢の中と現実のあいだをさまよっている。
これはきっと、都合の良い夢だ。現実はそんなにも甘くない。
自力で立ち上がれないほど酔っ払ってなお、夢に浸りきれない自分が悲しい。
「ぶ…ぶちょうのばかやろー…ムニャムニャ…」
あゆみはそのまま眠ってしまった。夢と現実の狭間で、かき捨ててしまいたいほどの恥を晒してしまったと後悔に打ちのめされながら。