愛が冷めないマグカップ
踊り場を抜けて細長い廊下を少し歩くと、がしゃんがしゃんと機械の音が聞こえて来た。
がしゃんがしゃんに時折シューッという音が混じって賑やかだ。たしか一階部分はほとんどがフォークリフトの出入りが可能な高い天井のスペースで、高い天井に届きそうなほど大きな機械が均等に並び、天井から長いチューブがぶら下がっていたり、あちらこちらに金属の固まりや細いワイヤーのようなものが置かれていたはずだ。
ということは、この廊下を抜けるとその広い加工場にたどり着くのだろうか。まるで迷路みたいだとあゆみは思った。
「ここだよ」
小林は頑丈そうな扉の前で立ち止まった。あゆみも慌てて追いつくと、小林は扉の横のボタンを押して、自動扉を開いて見せた。
ゆっくりと扉が開いていく。「閉めるときは、特に気を付けるようにね」と小林があゆみに言った。あゆみははいと頷いた。確かに、この扉に挟まれてしまったら骨折どころでは済まなそうだ。
扉が完全に開くと、がしゃんがしゃんと聞こえていた音が一層大きく聞こえた。
部屋の中には錆びた棚に置かれたいくつもの金属の固まりと、まるで部屋中を埋め尽くすように古い機械が並べておかれていた。機械は古いけれどほとんどのものが稼働していて、何かが次々に作り出されてはプラスチックの大きなケースの中に落ちていく。
そこに隠れるように、作業着姿のおじいさんが3人、パイプ椅子にちょこんと座っていたり、立ちながら機械を操作しているのだった。
「神様みたいな人たちだよ。金属のことなら何でも知ってる人たちだ」