愛が冷めないマグカップ



「神様…ですか?」


隣に立つ小林を見上げて、あゆみは言った。



「そう、神様。もうとっくに現役は引退してるけど、3人ともうちの会社になくてはならない人なんだ。還暦はとっくに過ぎてるし、耳も遠いし、おまけに3人揃って頑固オヤジだ」



小林は、機械の音に負けないような声で言った。3人のうちのひとりがちらりとこちらを見たのであゆみはぺこりと頭を下げたけれど、おじいさんはそれに応えることなくまたすぐに機械に視線を戻してしまった。さっそく神様に無視されたことに少し落ち込んでしまう。



「あれが頑固オヤジ1号。特技は金型の研磨とボーリング」



あゆみを無視した小柄なおじいさんを指差して、小林が言った。

1号は仏頂面で、ただひたすら動き続ける機械だけを見つめている。

小林が1号のそばに近寄り、耳元で思い切り叫ぶ。


「俺の補佐をやってもらう、あゆみちゃん!」


小林はあゆみを指差した。1号が、ちらりとあゆみを見ると、あゆみはもう一度ぺこりと頭を下げ、そしてありったけの声を振り絞って叫んだ。



「桜庭あゆみです!よろしくお願いします!」


その声に、あとの2人の頑固オヤジたちも振り返り、驚いた顔であゆみと小林を交互に見た。ふたりが部屋に入って来たことに今気付いたらしい。


小林はあゆみに目配せをして、「あれが2号と3号ね」と小声で言った。




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