生意気なキス
「可愛い。
さっきまでも綺麗だったけど、こっちの方が俺は好きです」
  


どうかなと彼に聞けば、巻き毛ちゃんはにっこりと笑って、私の巻き髪をなでた。


何度も私を可愛いって言ってくれる彼に、なんだか胸が苦しくなる。
 

私、こんなに可愛いメイクをして、いいの?
可愛い自分になっても、いいの?


何かミスしても愛嬌で許されるような年齢はとっくに過ぎたから、今までずっと必死でがんばってきた。

仕事も恋愛も、ただ目の前のことを精一杯やってきた。


そうしなきゃいけないって思ってた。
私は自立した大人の女性だからって。

もう可愛いなんて年齢じゃないから、そんなキャラじゃないから。


でもね、私本当は誰かの可愛い女の子でいたかったの。いくつになっても。

たまには誰かに頼って、甘えたかった。


誰かに強制されたわけでもないのに、必死でがんばってきたけれど、そんなところが彼氏や周りの人間を疲れさせていたのかな。

息を抜くこともしないで、頑張りすぎてしまっていたのかもしれない。


まるで私のいつものメイク......。
濃く塗られたレッドブラウンの口紅に、しっかりとリップラインをとった唇みたいに。
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