生意気なキス
「そろそろ離してもらえる?」



目をそらしたまま、彼の腕の中から抜け出そうと胸を押せば、その手をぎゅっと強く握られて。

もう片方の手を後頭部に添え、上を向かされたかと思えば、何か反応する暇もないほどに、すばやく唇を押し付けられた。


触れ合わせた唇を一度離してから、すぐにもう一度キスされる。

今度は触れるだけじゃなくて、熱い舌を口の中まで入れられて......。

彼とキスしてると、彼の大きな口に噛みつかれて、まるで唇ごと食べられてしまうんじゃないかという気さえしてくる。


こんな、初対面でキスされて、突き飛ばすどころかひっぱたいてもいいはずなのに、なぜかそうはできない。

それどころか私は、気づいたら彼の首に手を回し、しがみついて夢中でキスに応えていた。

 



「キスしたら、グロス塗った意味ないでしょう......。全部とれたじゃない」



巻き毛ちゃんの唇がようやく離れた後、何を言ってやろうか迷ったあげく、第一声にそれを選ぶ。

せっかく唇が潤っていたのに、全て犬のようになめとられてしまった。

涙で濡れた目元をぬぐいながら、反省の色もなくにやついている彼の耳を引っ張る。
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