危険なアイツと同居生活
「やばくね?」
賢一が小声で呟く。
「唯ちゃん……」
蒼が小さく耳打ちする。
それだけでぞくっとして、身体の力が抜けてしまいそう。
「逃げるよ!」
蒼はあたしの手をぎゅっとつかむ。
そして、人を掻き分けながら走る。
辺りから悲鳴が上がり、その悲鳴が連鎖する。
「おい!てめぇら!!
何か言いやがれ!!」
後ろから優弥さんの怒号が追いかけてくる。
それでも、あたしの手を引きながら走る蒼は楽しそうだった。
まるで囚われの城から逃げる姫の気分。
ドキドキして、ワクワクして、
そして、蒼が人前に関わらずあたしと一緒にいてくれることに感動して。
走りながらにやけていた。