ずっと前から君が好き
学校には着いたが、当然なことに人の姿はなく、
俺は他の生徒が登校してくる時間まで、下駄箱の端に座って待つことにした。
暇だな~...
「ふぅ...。」
そう思いながらため息をついて、おもむろに携帯を開く。
「...!---ぷっはははっ!」
携帯を開いた瞬間、大笑いをするなんて、他の人が見たらおそらく、"近づいちゃいけない人"扱いになるだろうが、今はしょうがない。
なぜならその開いた画面には、面白過ぎる一枚の写真が映し出されていたから。
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俺と蒼太と銀が初めて遊びに行った日のこと。
寮に帰る途中、銀が「記念だから」と言って写真を撮ることになった。
「ちょっとー二人とも?もっと笑って笑って!!あっ!これで~~どうだっ!」
「「!.....ふははははっ!!」」
なんとも言えない銀の変顔に、緊張で顔が強ばっていた俺たちは、笑いが止められなくなった。
腹を押さえながら、蒼太が言う。
「お、お前....ぷっ!な、なんて顔をしてるんだ...くふふっ...!腹痛い!」
「だい...ぷっ!....大丈夫かっ蒼太...ふははっ!」
蒼太を心配してそう問いかけても、蒼太は答えられないほどツボっていた。
俺もいまだに続けている変顔を見て、笑いを堪えきれなくなった。
「もうやめてくれ」と思ったとき、銀が不満そうな顔を見せた。
「....確かに"笑って"とは言ったけど、そんなに笑わなくてもいいんじゃないかな!」
プクーっと顔を膨らませて、銀は続ける。
「ひどいよ!二人とも!せっかく、二人が笑えるように頑張ったのに!」
「わ、わるいわるい。だって....ぷっふふふ!」
写真を撮るために、普通の顔を作ろうとしても、銀の変顔のインパクトが強すぎて笑ってしまう。
蒼太も俺と同じ状態だったらしく、まだ腹を押さえて笑っていた。
銀が呆れた声で言った。
「もういいよー。このまま撮っちゃうからね!」
「えっ!?ちょっと待っ...」
俺の静止も聞かず、素早くカメラのシャッターを押して銀は笑った。
「ふふっ!これサイコー!いいのが撮れたよ♪」
俺は銀に近づき、写真を見る。
そこには大きく口を開いて、あほ面の自分の顔があった。
「どれどれー?うっわ!俺、すげー顔してる!」
「くっくっく!蒼太なんか笑い堪えて、顔に力入れてるよ~!」
「うわあぁぁぁ!!!やめろっ!見るな!!!」
蒼太の必死な思いは届かず俺は蒼太の顔を見てしまった。
銀が言った通り、笑いを堪えようと顔を真っ赤にしている蒼太があった。
今度は俺と銀が大笑いをする。
「「あはははは!!!」」
「...だから嫌なんだ、写真は...。」
俺らとは裏腹に、蒼太はその場に座り込んで黒いオーラを出して、
それからはいつもみたいに、蒼太を立ち直らせて銀が殴られ俺は笑った。
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ある程度笑った後、俺は再び携帯を見る。
俺、本当に大切な友達ができたんだな...。
俺はいつも誰かと遊びたくて、走り回りたくて、大声で笑ってみたかった。
銀と蒼太は、その全部を叶えさせてくれた。
あいつらには"ありがとう"じゃ、足りないな...。
今度は、俺があいつらの助けになる。
そして、唯....。
唯は...俺を認めてくれるか?
小さい頃は"君みたいになりたい"と思っていた。
でも今は違う。
俺は、"君の隣にいられる俺になりたい"。
昔から想っていたこの気持ちは、7年経った今でも変わらないから、だから俺は...!
「...ゆ、優也...なの?」
その声にハッとなって顔を上げると、髪を二つに結んだ女の子が立っていた。
「唯...。」
前教室で話していたときと髪形は違うけど、間違えるわけがない。
俺が待っていた。たった一人の女の子。
「えっと!そのっ...おはよう。」
「あ...うん。おはよ。」
挨拶を返すと、唯は前と同じようにスカートの裾をキュッと掴んだ。
それはまるで唯の心を表しているような気がした。
「「あのさっ!!あ...!」」
また声が重なった。
俺は俯いた状態で、目線だけ上げて唯を見た。
「...っ!?」
俺の目の前にいる唯の顔は、なぜか今にも泣きそうな顔をしていた。
「ゆ、唯...どうした?」
「!!な、なんでもないの!...えっと...その...」
「....っ!!」
唯の目から一筋の涙がこぼれた瞬間、俺は無意識に小さくて白い、唯の手を掴んで走りだした。