ずっと前から君が好き
ずっと前から君が好き
うるさいほどの音量で鳴るアラームで、俺は目覚めた。
グッと体を伸ばして、ベットから立ち上がる。
着なれた制服に着替え、少し錆び付いている、硬い窓を手に力を入れて開けると、太陽のまぶしい光が目に飛び込んできた。
「っ...!」
光を手で遮りながら、空を見上げる。
唯...俺の話、聞いてくれるかな...?
「な~に深刻な顔してるのっ?」
「うわぁっ!?...あ~びっくりしたぁ...。いきなり、後ろから話しかけないでくれよ...バカ銀ー。」
銀はアハハっと笑って俺の背中を叩く。
「いやー、ごめんごめん!驚かそうとは思ってなかったんだけど、なんか優也が不安そうな顔してたからさっ?」
俺は言葉が詰まった。
たしかに、俺は今すごく不安だ。今まで、たくさん唯にひどいことをしてきて、それでも唯は俺を許してくれるのか...。
思えば思うほど、不安は募っていく。
そんなとき、ふいに俺の名前をもう一人が呼んだ。
「おい、優也。」
振り返ると、グレーのジャージ姿の蒼太が立っていた。
蒼太は俺の両肩を両手で押さえながら笑った。
「優也、もっと肩の力を抜け。大丈夫、リラックスしてゆっくり深呼吸だ。」
「あ、あぁ。...すぅ~はぁ~...。」
蒼太に言われた通り深呼吸をすると、不思議に緊張が和らいだような気がした。
二人はたぶん、俺の背中を押そうとしてくれたんだろう。
嬉しさのあまり、俺はさっきまでの気持ちを忘れて、笑って口にする。
「ありがとう、二人とも!俺、行ってくるよ!!」
その場所から走りだしたとき、後ろから二人の大きな声がした。
「えぇ!?もう行くの!?まだ7時半だよ!?」
「さすがに今行くのは早すぎるぞ!?」
後ろを見ると、時計を指さしながら口をぽかーんと開けている銀と、部屋着のまま俺を止めようとしている蒼太がいて、その面白い状況に俺は思い切り吹きだした。
「ぷぷっははは!!銀っ...!蒼太っ...!(笑)面白過ぎ!」
爆笑しだした俺を、銀と蒼太は渋い顔で見ていた。
「そんなに笑うことないじゃんかよー...!」
銀が頬を膨らませて言うと、蒼太が続けて不満そうに言った。
「"リラックス"とは言ったが、そこまでとは...。」
不機嫌そうな顔をする二人に、笑いを必死に堪えて軽く謝る。
「ぷぷっ...っんん!ごめんって!怒らないでくれよ!なっ?」
「もういいよ~。今日帰って来たら、質問攻めしてやるからね!(笑)」
「...そうだな。さくっと言って帰ってこいよ?」
銀の言葉に重ねるように蒼太もそう言った。
だけど....。
「ふ、二人とも、目が怖いって...。」
そんな黒いオーラに見送られながら、俺はいつもより30分も早く寮を出た。
二人に分けてもらった勇気を持って。