ずっと前から君が好き
--そろそろ行くかな..?
キャリアーバックを左手に持ち替え、公園を出る。
俺が次に向かう場所は、明日から通う高校。
ある程度の手続きは終わっているけど、寮に荷物を置きたいし、同じ部屋の人に挨拶をしなければいけないから。
ちなみに明日が入学式だ。
だから今日のうちに、いろいろ準備を整えておきたくて。
携帯で地図を見ながら、高校に向かう。
そろそろキャリアーバックを引くのも疲れて、
歩くスピード落ちてきたと同時に、目的地の高校が見えてきた。
茶色で統一された校舎、それを通り過ぎた所に、学年で色分けされた寮が顔を出す。
俺は1年生だから、緑色の建物だ。
屋根の色を確認して俺は建物の中に入っていく。
「605号室...605号室..。」
学校から送られてきた資料と、部屋の番号を交互に見ながら長細い廊下を歩く。
そして、出口から5番目のところに"605"と書かれた扉を見つけた。
普通の地元の人だったら、もう寮での生活は始まっているはずだから、
どんな人がいるのか分からなくて少し緊張するけど...。
「ここか..んんっ!」
身だしなみを整え、小さく咳払いをして俺は少し声を上げて言った。
「すいません!今日から入る、篠原優也ですけど!」
「あっ!!はーいよっ!」
思ったより明るい声が聞こえて、驚いていると扉は勢いよく開いた。
そこにいたのは...
「待ってたよー!!今日からよろしく!あっ!俺は宮田銀!銀って呼んで!
俺も優也って呼んでいい!?あっ!荷物もらうよー!!」
「あ、あの、え..」
...茶色の髪を揺らしながら笑う、男の子だった。
あまりのマシンガントークの彼に驚いて、混乱していると、バシッと痛そうな音と"うぐっ"という、小さな悲鳴が彼の方から聞こえた。
「おい、銀、落ち着けって。彼が困ってるだろ。...悪いな、篠原くん?」
マシンガンな彼の後ろから、ひょこっと顔を出した男の子が俺に向かってそう言った。
「あ、いえ、大丈夫。そ、それより...」
俺が叩かれた男の子に目を向けると、彼はそれで叩いただろう、丸めた雑誌を手の平にポンポンと当てながら、言った。
「あぁ、そいつならほっといていいから。さっ入って入って。」
「うん。お邪魔します。」
「ひっどいよー、蒼~!」
彼の言われたとおり部屋に入ると、部屋の両端に二つずつベッドと勉強机、真ん中にじゅうたんがひいてあって、その上には丸い形のテーブルが置いてあった。
けっこうきれいなんだな~。
そんなことを思いながら部屋をキョロキョロ見渡していると、雑誌をテーブルに置いた彼が俺の方に振り返った。
「改めて、俺は吉野蒼太<よしの そうた>。それで、あっちで頭さすってるバカが、
宮田銀<みやた ぎん>だよ。」
その言葉で宮田君を見ると、痛そうに頭をさすっていたが俺と目が合うとニコッと笑ってピースを向けてきた。
慌てて二人に頭を下げる。
「あ、よろしくお願いします。俺は篠原優也です。あの、吉野君...」
「あぁ、俺も蒼太でいいよ。敬語もなし。なっ?」
そう言うとそっと俺の前に手を出してきた。
「よろしくな、優也。」
「分かった!よろしく、蒼太。銀もよろしく!」
蒼太に握手してから、俺がそう言って二人に笑うと、
二人も"あぁ!"と返事をしてくれた。
よかった、仲良くなれそうだ♪
そう思いながら、俺はお互いに好きなマンガやテレビの話、自分たちのことを話しながら、明日の入学式の準備をし始めるのだった。