管狐物語

桜は、部屋に帰る道すがら、今日一気に起こった出来事を思い返した。

管狐なんて、信じられなくて、最初は気味が悪かったが、あまりにも人間と変わらない彼らをいつの間にか、受け入れていた。



ー 妖って言っても、怖いものばかりじゃないんだな…


ふふっと桜は笑い、祖母の部屋のふすまを開ける。

さっき起きたままの状態の布団が置いてあり、祖母が使っていた机には、祖母の写真が置いてあった。

優しく微笑む祖母の写真に、桜は話しかける。


「…おばあちゃん、ありがとう。
私が淋しくないように、ずっとお願いしてくれてたんだね…。
まだ、緊張するけど、ちょっとずつ仲良くなれたらいいな…」

桜は胸が暖かくなるのを感じながら、しばらくの間、祖母の写真を眺めていた。


優しい春の夜の風が、部屋に流れ、桜の頬に触れた…。


この家に来てから、祖母の存在を近くに感じるようになっていた。

幸せな気持ちで、桜はこの家に住めるようになった事に感謝した。

「さてと、軽くシャワー浴びてこようっと」

桜はお風呂に入る用意をして、鼻歌をうたいながら、部屋を出て行った。
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