管狐物語
「焰っ‼︎‼︎」
傷だらけの身体は、彼女の声を聞いても、自分の方へ走ってくる彼女の姿を見ても、ピクリとも動かなかった。
ー だめだっ‼︎
蛍!こっちに来たらっ…
叫んで、彼女の腕を掴んで、止めたかったが、身体が言うことを聞かない。
「やめてぇーーーーーーーー‼︎」
彼女が両手を広げて、自分をかばう。
それと同時に温かい液体を頭から被った…。
スローモーションのようにゆっくりと彼女が自分の方に倒れてくる。
愛しい彼女を受け止めたくて、手を伸ばしたかった。
このまま倒れたら、硬い地面に叩きつけられてしまう…。
それでも、思いとは裏腹に、彼女が自分に倒れかかるまで、焰の身体は動かなかった。
「蛍ーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
ー なん…だよ…っ!
今更、今更声が出んのかよ…
目の前が赤く染まる。
彼女の血が目に入ってきたのか、彼女に刃を向けた「あの男」に対する憎悪からなのか…。
焰は叫び声をあげて、男に炎の刃を振り下ろす………