愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「そして愛が欲しいのに、誰に貰えばいいか分からないまま、ずっと過ごしてきた。違う?」
『…』
「そんな飢えてる中でせっかく誰かを好きになって、その人から愛が欲しいと思ったのに、その人が他の人に愛情を注いでいるのを見てしまったとしたら、ショックだよね」

健吾さんが、静かに泣いているのが分かった。

「愛は、恋愛だけじゃない。家族愛だって必要だけど、あなたはずっと、家族の愛情の全くない中で育った。再会できた実のお母さんだって、会話の表面上は親子みたいだけど、結局は"良美さん"だし」
『玲奈の家が、羨ましい』

涙声で鼻詰まりな健吾さんの声だ。

『地位とか名声とか、そんなものいらないんだ。欲しいのは愛なのに、誰からも愛してもらえなかった。玲奈の家のような、家族愛に満ち溢れた笑顔の絶えない環境に生まれたかった』
「うん」
『玲奈…ごめんな。君のような高校生は、きっと大人な男性を好むんだろうに、こんなダメな男でさ』

健吾さんは少し頭の角度を変えて、私を見た。
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